昨日の京小紋について



パンフレットに添付された染色研究家 木村孝氏の文章の
ほうがはるかにわかりやすい説明なので以下に。


京の手描き着尺 木村孝


 東の江戸小紋、西の京小紋といいますが、どちら
も型紙を用いた小紋染です。


 近頃は、礼装や訪問着などの絵羽ものと、小紋
のように反物を丸巻きにした品とを分類する名称と
して、丸巻きの品はすべて小紋とよぶようになりました。


 本来は染着尺または加工着尺です。着物の用尺に
染めた品、また羽尺とは羽織やコートの用尺を染め
た品のことです。


 「駒宮」の加工着尺は、先代藤本彌三郎が考案し
た手描き京染の種々です。


 「地紋起し」は地紋の面白い白生地を用い、地紋
の凹凸の味を生かし深さを見せる技法。
 「墨流し染」古くから和歌の料紙に墨流しを写し
ました。その技を絹の着尺に染めた品。
 「手描き着尺」無地生地の上にフリーハンドで図
柄を描き、何度も色を重ねていく着尺。これは腕の
たしかな職人さんでないと、一反を同じのびやかさ
で仕上げることができないのです。このほか一反の
着尺にゴム糊、絞り、ろうけっなど、あらゆる技法
を駆使して表現したものもあります。


 明治生まれの彌三郎翁の熱い志は、今も駒宮に生
きています。この技を、いま絶えさせてはならない
と思っています。


 ともすれば晴着ばかりを追う現代のきものですが、
この加工着尺は、着姿は春霞鍍鑓(あいたい)というような、
はんなりしたもの。近寄ってみれば、丁寧な手描きの
仕事です。江戸小紋も一見無地かと見えても、近付
いて始めてわかる精級な日本の型染の技。わざには
東も西もなく、見事な腕を見せる日本の職人芸の世
界です。


 加工着尺は、しゃれ着に向きましょう。着やすく、
着る人を生かすきものの一枚となるかと思われます。
               (きむらたか 染織研究家)


製作・販売する側は、「着てほしい」という願いで展示するはずです。
でも、一般的に着物や呉服店については
「敷居が高い」「どれが似合うか見当がつかない」のが実情。
このギャップはなんとかならないものかと。
素晴らしいものを製作されているので余計にそう思います。


でも、たくさんある反物のなかで、どれを仕立ててもらうか
選ぼうとしても、何を基準にしていいのかわからないのが現状です。